防火区画の貫通処理|配線・配管が壁や床を抜けるときのルール

防火区画の貫通処理|配線・配管が壁や床を抜けるときのルール

ビルの中は、火災が広がらないよう「防火区画」と呼ばれる壁や床で細かく区切られています。ところがオフィスの内装工事では、電源ケーブル、LANケーブル、給排水管、空調ダクトなどを、この区画を越えて通さなければならない場面がたくさんあります。

区画に穴を開けたままにすると、火災時にそこから煙や炎が広がってしまいます。そのため、貫通部分には決められた方法での処理が必要で、多くのビルではこの処理をビル指定業者のB工事としています。ここでは、そのルールを解説します。

結論

配線・配管・ダクトが防火区画の壁や床、EPSの壁を貫通する部分は、国の認定を受けた工法で隙間を埋める「区画貫通処理」が必要です。多くのビルでは区画の形成や貫通処理をB工事とし、テナントの施工会社が勝手に穴を開けることは認められません。施工中・施工後の写真を残し、報告書で提出するのが一般的です。

防火区画とは

防火区画は、建築基準法に基づいて、火災が建物全体に広がらないように一定の範囲を耐火性能のある壁・床・防火戸で囲んだものです。オフィスビルでよく見られるのは次のような区画です。

  • 竪穴区画:階段、エレベーター、EPS(電気シャフト)、PS(配管シャフト)など、上下の階をつなぐ縦の空間を囲む区画
  • 面積区画:一定の床面積ごとに設ける区画
  • 共用廊下との区画:避難経路となる共用廊下を、火災から守るための区画(避難安全検証のビルでは「安全区画」とされることが多い)
  • テナント間の区画:隣り合う貸室同士を仕切る壁(A工事壁)

テナントの区画内に新たに防火区画を設ける場合(サーバー室を区画する、大型UPSを区画するなど)も、同じルールが適用されます。

貫通が発生する典型的な場面

場面 貫通するもの 貫通する区画
複数フロアをLANでつなぐ LAN・光ケーブル EPSの床・壁(竪穴区画)
電源の増設、分電盤から区画へ配線 電源ケーブル EPSの壁
給湯室・水回りの新設 給排水管 PSの壁
喫煙室・サーバー室の排気 ダクト 共用廊下との区画、シャフト
隣接区画も借りて壁に開口 扉・配線 テナント間の区画壁
天井まで立ち上げた区画壁 天井内の配線・配管 新設の区画壁

LANや電話の配線工事は内装業者とは別の業者が行うことが多く、区画貫通の扱いを知らずに穴を開けてしまうケースがあります。通信業者にもビルのルールを伝えておきましょう。

処理の方法と認定工法

区画貫通処理には、国土交通大臣の認定を受けた工法や材料を使います。ケーブルの場合は、耐火性のあるパテやシール材、耐火ブロック、貫通部材などで隙間を埋めます。配管の場合は、管の材質(金属管か樹脂管か)や径によって、使える工法が決められています。ダクトが区画を貫通する場合は、防火ダンパーを設けるのが原則です。

認定工法は、材料や施工方法を守らないと性能が保証されません。施工後には、認定番号を示すラベルを貼付する工法もあります。後からケーブルを追加すると処理が崩れるため、将来の増設を見込んだ工法を選ぶことも大切です。

工事区分と申請

多くの指針書では、防火区画に関わる工事を次のように定めています。

  • C工事の設計に起因する防火区画・不燃区画の形成(壁下地、ボード張り、防火扉、防火シャッター、防火ダンパー、貫通処理など)はB工事、表面の仕上げはC工事
  • C工事の配線・配管のために、A工事・B工事で設けた防火区画に穴を開けたり貫通処理をしたりするのはB工事
  • 躯体(コンクリートの床・壁)や耐火被覆に損傷を与える行為は、原則禁止
  • 階をまたぐ床スラブの貫通は原則禁止で、専用EPS内の竪配管を利用する

区画の性能はビル全体の安全に関わるため、ビルの設計者が内容を確認し、指定業者が施工する仕組みになっているのです。貫通を伴う作業は、作業届や「斫り・貫通工事届」に図面を添えて事前に申請します。

写真記録と報告書

区画貫通処理は、完成すると中が見えなくなります。そのため指針書では、施工中・施工後の写真を撮り、工事完了時に「防火区画工事報告書」として提出するよう求める例があります。報告書には、施工箇所、工法、使用材料、写真を添付します。

消防検査や後日の点検で、区画の処理が適切かどうかを確認する際の根拠にもなります。入居企業としても、竣工図書と一緒に保管しておくと、レイアウト変更や退去時の原状回復で役立ちます。

区画上に間仕切りや扉をつくるとき

配線・配管の貫通だけでなく、防火区画の線上で間仕切り壁や出入口を追加・変更する場合も、法に従った方法・材料で区画を形成し直す必要があります。たとえば共用廊下に面した専有部の扉は、特定防火設備や遮煙性能を持つ扉として認定品が使われていることが多く、移設はできても性能や仕様は変えられない、とするビルがあります。扉の移設に伴う床・壁・天井の補修範囲も、ビル側が指定することがあります。

また、防火戸や防火シャッターの周辺(例:150mm以内)は、下地・仕上げとも不燃とするよう求める例もあります。区画の近くで内装を計画するときは、区画の位置を図面上で明示し、内装監理室と早めに相談しましょう。

天井内まで間仕切りを立ち上げて新たな区画をつくる場合は、天井内を通っている既存の配線・配管・ダクトとの取り合いも生じます。他のテナントの設備が天井内を通っているケースもあるため、天井内の調査を行い、区画を貫通する設備をすべて洗い出してから計画することが大切です。

退去・レイアウト変更のときも

レイアウト変更でケーブルを撤去・追加するときも、区画貫通部をいじれば再処理が必要です。退去時の原状回復では、テナントが追加した配線を撤去し、貫通部を元の状態に復旧します。この作業もビル指定業者の工事となることが多いため、退去費用の見積に含まれているかを確認しましょう。

区画貫通のチェックリスト

  • 工事で防火区画を貫通する箇所を図面で洗い出した
  • EPS・PS・共用廊下との区画の位置を確認した
  • 貫通処理とダンパーの工事区分(B工事)と費用を確認した
  • 通信・電気業者にも区画貫通のルールを伝えた
  • 作業届・貫通工事届を図面付きで提出した
  • 施工中・施工後の写真と報告書の提出方法を確認した

ビルの工事ルールの確認や、指針書に沿った工事計画・見積のご相談も承ります。

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