オフィス収納の選び方

オフィス収納の選び方|書類量は「ファイルメーター」で測る。高さ・奥行き・扉の選び方と地震対策

オフィスの収納計画は、「今ある書類が入るか」だけで決めると失敗します。書類は放っておくと増え続け、収納を増やすほど通路が狭くなり、地震のときには倒れてくるリスクにもなります。

この記事では、書類の量をファイルメーター(fm)という単位で測る方法から、高さ・奥行き・扉の選び方、そして見落とされがちな地震対策までを、実務の順番に沿って解説します。

さらに後半では、必要収納量の計算例、書類を「どこに・いつまで」置くかの保管ルール、床荷重やセキュリティ区分、移転時のスケジュールまで、総務担当者が計画書にそのまま落とし込める形で整理しています。

結論

まず書類の量を「fm(並べた長さ)」で測り、捨てる・電子化する量を差し引いてから必要な収納量を決めます。高さは座った目線より低いH1,050前後を基本に、壁際だけ背の高い収納を使うと、圧迫感と転倒リスクを抑えられます。上下に積む場合や背の高い収納は、連結と床・壁への固定をセットで考えます。

白いデスクと低めの収納を組み合わせた執務室。収納の高さを抑えると、空間に抜けが生まれる
白いデスクと低めの収納を組み合わせた執務室。収納の高さを抑えると、空間に抜けが生まれる

書類の量は「ファイルメーター」で測る

ファイルメーター(fm)は、書類やファイルを横一列に並べたときの長さで量を表す単位です。1fmはファイルを1m並べた量。キャビネットの棚1段の有効幅が約0.85mなら、1段で約0.85fm入る、と計算できます。

測り方の手順

  1. 棚や引出しごとに、入っているファイルの背幅の合計をメジャーで測る(ざっくりで構いません)
  2. 机の上や床置きの書類も、積み上げた高さを「横に並べた長さ」に換算して加える
  3. 部署ごとに合計し、1人あたりの量も出しておく

現状の量がわかったら、次に「捨てる」「電子化する」「倉庫や書庫に移す」量を決めます。保存年限を過ぎた書類や、データで残っている資料を整理するだけで、収納量が3〜5割減ることも珍しくありません。移転やレイアウト変更は、書類を見直す絶好の機会です。

ここがポイント

必要な収納量は「整理後の量 × 1.1〜1.2」で見込んでおくと、運用を始めてからの増加分を吸収できます。ぎりぎりで計画すると、数か月で机の上や床に書類があふれ出します。

高さ別の収納量と使い分け

H700約1.7fmH1050約2.5fmH1750約4.2fmH2150約5.1fm幅900mmの収納庫にA4ファイルを縦置きした場合の目安(1段あたり有効幅約0.85m)
高さ 段数の目安 使いどころ
H700前後 2段 デスクの横や窓下。天板をカウンターとして使える
H1,050前後 3段 島と島の間の間仕切り。座った目線より低く、視線が抜ける。上を書類の仮置きや打ち合わせ台に使える
H1,750前後 5段 壁面収納。立った目線とほぼ同じ高さで、出し入れのしやすさと収納量のバランスがよい
H2,150前後 6段 壁面いっぱいの収納。最上段は踏み台が必要なので、使用頻度の低い書類に

出し入れのしやすさは、高さによって大きく変わります。腰から目の高さ(床から約700〜1,600mm)が最も使いやすい「ゴールデンゾーン」で、毎日使う書類はここに、年に数回しか見ない書類は最上段や最下段に置くのが基本です。

奥行きと扉の種類の選び方

奥行きは「何を入れるか」で決まる

  • D400:A4ファイルの縦置きが中心。省スペースで通路を広くとりたい場所に
  • D450:A4ファイルに加え、厚みのあるバインダーや小物も余裕をもって入る標準的な奥行き
  • D500:A4の横置きやB4、OA機器や備品まで入れたい場合

扉は「通路幅」とセットで選ぶ

扉の種類 特徴
両開き 全面を一度に開けられ、出し入れしやすい。扉の開く範囲(約450mm)だけ前のスペースが必要
引違い 扉が手前に出ないので、狭い通路でも使える。ただし一度に開けられるのは半分
ガラス扉 中身が見えて探しやすく、圧迫感も少ない。見せたくない書類には不向き
オープン 最も出し入れが早い。来客から見える場所では整理整頓が前提
引出し・トレー 小物や伝票、図面など、平置きしたいものの整理に
曲線テーブルと収納を組み合わせた交流スペース。収納を家具の一部として見せている
曲線テーブルと収納を組み合わせた交流スペース。収納を家具の一部として見せている
作業デスクのそばに収納を置き、手の届く範囲で作業が完結する個別ブース
作業デスクのそばに収納を置き、手の届く範囲で作業が完結する個別ブース

壁面に置くか、島に置くか

壁面に並べると、まとまった量を収納でき、執務エリアが広々と見えます。一方、席から収納まで歩く距離が長くなり、部署の書類が離れた場所に置かれることもあります。

島の端や島と島の間に置くと、手の届く範囲に書類があり、部署ごとのエリアを自然に区切る間仕切りにもなります。この場合は座った目線より低いH1,050前後を選ぶと、圧迫感が出ません。

フリーアドレスを導入する場合は、個人の荷物を入れるパーソナルロッカーが欠かせません。カバンやPCを入れられるサイズか、鍵の方式(シリンダー錠・ダイヤル錠・電子錠)が運用に合っているかを確認しましょう。

収納家具の地震対策

背の高い収納や上下に積み重ねた収納は、地震のときに転倒し、けがや避難経路をふさぐ原因になります。収納計画では、置き場所と同時に固定方法まで決めておくことが大切です。

  • 上下の連結:上下に積む収納は、専用の連結金具で一体にする
  • 横の連結:横に並べた収納同士をつなぎ、1台だけが倒れるのを防ぐ
  • 床・壁への固定:アンカーや専用金具で床や壁に固定する。賃貸ビルでは、工事の可否を事前に管理会社へ確認
  • 重いものは下段に:重心を低くするだけで倒れにくくなる
  • 扉・引出しの飛び出し防止:揺れで扉が開き、中身が落ちてくるのを防ぐラッチ付きのタイプを選ぶ
  • 避難経路の確保:倒れたときに出入口や通路をふさがない向き・位置に置く

固定方法は、建物の床や壁の構造、ビルの規定によって選べるものが変わります。施工を伴う固定は、専門業者に相談してから計画しましょう。

カウンターを兼ねたL字型の収納
カウンターを兼ねたL字型の収納

必要な収納量を計算してみる

ファイルメーターで現状量を測ったら、次は「新しいオフィスで何台の収納が必要か」を計算します。ポイントは、現状量そのものではなく、削減後の量に「将来の増加分」と「余裕分」を足して考えることです。

  1. 部署ごとの現状量(fm)を合計する
  2. 廃棄・電子化・書庫移管で減らせる量を差し引く
  3. 今後数年で増える見込み量を加える(新規事業や人員増など)
  4. 出し入れしやすさを保つため、収納率は8割程度を上限に見込む
  5. 必要fm ÷ 収納1台あたりのfm で台数を出す
項目 考え方の目安
削減率 書類整理を徹底すると3〜5割減ることもあるが、計画上は控えめに見積もる
増加分 部署の業務特性で差が大きい。過去数年の増え方から推定する
収納率 満杯前提で計画すると、半年後には床置きが始まる
1台あたりfm 棚の有効幅×段数で計算。引出しは書類の向きで容量が変わる
ここがポイント

「今ぴったり入る」計画は、入居直後から破綻します。台数を決める段階で、最低でも1〜2割の空きを確保しておくのが実務上の目安です。

書類は「手元・部署・書庫」の3層で管理する

収納量を抑えながら使いやすさを保つには、書類の使用頻度に応じて置き場所を分ける考え方が有効です。毎日使う書類と、年に一度見るかどうかの書類を同じ執務室の一等地に置くのは、面積のムダになります。

層 置く書類 置き場所
手元(個人) 進行中の案件・毎日使う資料 デスク引出し・ワゴン・パーソナルロッカー
部署(共有) 当期・前期の書類、部署で共有する資料 島の端の収納、壁面収納
書庫・倉庫 保存年限中だが使用頻度が低い書類 専用書庫、外部保管サービス

年度替わりに「手元→部署→書庫→廃棄」と書類を一段ずつ移す仕組みを決めておくと、収納が自然に一定量で回るようになります。担当者と実施時期をあらかじめ年間スケジュールに組み込んでおくのがコツです。

電子化で収納を減らすときの進め方

ペーパーレス化は収納削減の最も効果的な手段ですが、「全部スキャンする」と決めると作業量が膨らみ、途中で止まりがちです。対象と順番を決めて段階的に進めます。

  1. 電子化してよい書類と、原本保管が必要な書類を区分する(法令や社内規程で扱いが異なるため、一般的には経理・法務部門と確認)
  2. 新たに発生する書類から電子化を始め、紙の発生量そのものを止める
  3. 過去書類は使用頻度の高いものだけを優先してスキャンする
  4. スキャン後の原本の扱い(廃棄か保管か)をルール化する
ここがポイント

電子化の対象と原本保管の要否は、書類の種類や業種によって扱いが異なります。判断に迷う書類は、所管部門や専門家に確認してから廃棄してください。

重い収納は「床の強さ」も確認する

書類を満載したスチール収納は想像以上に重く、移動書架や書庫用の棚を一か所に集めると、建物の床が想定している荷重を超えることがあります。一般的なオフィスビルの床は執務室としての荷重を前提に設計されていて、書庫のような重量物の集中は想定外の場合があるからです。

  • 移動書架や大量の書類を置く場合は、事前にビル管理会社へ床の許容荷重を確認する
  • 重い収納は梁や柱の近くなど、構造的に強い位置に寄せると有利な場合がある
  • 許容を超える場合は、補強工事や置き場所の分散を検討する

床荷重の確認は、レイアウトが固まってからでは手戻りが大きくなります。書庫の位置を決める段階で、図面と一緒に早めに相談するのが安全です。

機密書類とセキュリティ区分

収納は「どれだけ入るか」と同時に「誰が開けられるか」も重要です。人事・経理・契約関係の書類は、執務室の誰もが開けられる場所に置くべきではありません。

区分 例 収納の考え方
一般 カタログ、共有マニュアル 扉なし・オープン棚でも可
社内限定 部署の業務書類 鍵付き収納、部署単位で管理
機密 人事評価、給与、契約書 施錠できる収納を、施錠できる部屋に置く

鍵の管理方法も合わせて決めておきましょう。鍵を収納の上に置きっぱなしにする、全員が同じ合鍵を持つといった運用では、鍵付き収納の意味がなくなります。キーボックスや暗証番号式の錠、入退室管理と組み合わせる方法もあります。

よくある失敗と対策

失敗例 原因 対策
入居半年で床置きの書類があふれた 現状量ぴったりで台数を決めた 削減後の量に余裕分を加えて計画する
背の高い収納で執務室が暗くなった 収納量を優先して高さを統一した 高い収納は壁際に限定し、島周りは低めにする
扉が開くと通路がふさがる 扉の開き方を図面で確認しなかった 開き戸の軌跡を通路幅と一緒に検討する
どこに何があるかわからない 部署ごとの割り当てを決めなかった ラベル表示と管理担当者を決める
ここがポイント

収納の失敗は、入居してから気づくことがほとんどです。図面上で「扉の開き」「人の動き」「書類の出し入れ」をシミュレーションしておくと、多くは防げます。

移転時の収納計画スケジュール

移転に合わせて収納を入れ替える場合、書類整理には想像以上に時間がかかります。後ろから逆算して動き出すことが重要です。

  1. 移転の数か月前:書類量の調査(fm測定)と、廃棄・電子化の方針決定
  2. レイアウト確定前:必要台数と置き場所、床荷重・固定方法の確認
  3. 発注前:扉の種類・鍵の方式・連結や固定金具の有無を仕様に反映
  4. 移転直前:廃棄書類の処分(機密書類は溶解処理など)、梱包
  5. 入居後:ラベル表示、鍵の配布と管理ルールの周知

収納家具は受注生産や納期のかかるものもあるため、レイアウト確定と同時に発注できるよう準備しておくと、スケジュールに余裕が生まれます。

メールボックス付きのカウンター収納
メールボックス付きのカウンター収納

規模別の収納計画の考え方

同じ「収納計画」でも、オフィスの規模によって重視すべき点が変わります。小規模なオフィスほど1台の収納が占める面積の割合が大きく、大規模なオフィスほど部署間のルール統一が課題になります。

規模の目安 よくある課題 計画のポイント
〜20人程度 収納が執務スペースを圧迫しやすい 壁面にまとめ、扉は引き違いで通路を確保。複合機周りと兼用する
20〜100人程度 部署ごとに収納の使い方がばらばら 部署単位で割り当てと管理者を決め、島の端に低めの収納を配置
100人以上 書類量の把握と統一ルールの徹底が難しい 全社で保管ルールを統一し、書庫・外部保管を前提に執務室の収納を絞る

どの規模でも共通するのは、「人数×1人あたりfm」という目標値を最初に決めておくことです。目標がないまま各部署の要望を積み上げると、収納は必ず膨らみます。

書類以外のモノの置き場を忘れない

収納計画は書類に意識が向きがちですが、実際のオフィスには書類以外のモノが大量にあります。これらの置き場が計画されていないと、書類用の収納や通路に押し出され、レイアウトが崩れる原因になります。

  • 事務用品・コピー用紙などの消耗品(ストック量と補充頻度を把握)
  • PC・周辺機器の予備、ケーブル類
  • 販促物・サンプル・カタログ
  • 防災備蓄品(水・食料・簡易トイレなど)
  • コート・傘・私物のカバン

特に防災備蓄品は量がかさみ、定期的な入れ替えも必要です。取り出しやすく、かつ執務の邪魔にならない場所を、最初から図面上で確保しておきましょう。

ここがポイント

「その他」のモノは、書類と同じく現状量を棚卸ししてから必要な収納を決めます。消耗品はストックを持ちすぎないルールにするだけで、収納を1〜2台減らせることもあります。

入居後に収納を「回す」運用ルール

どれだけ計画を練っても、運用ルールがなければ収納は数年で元の状態に戻ります。入居後に定着させたいルールを、計画段階で決めておきましょう。

  1. 収納ごとに部署名・管理担当者・中身を示すラベルを貼る
  2. 年に1回、書類の移管・廃棄を行う日を決める(年度末や長期休暇前など)
  3. 床置き・収納の上への物の放置を禁止し、定期的に巡回する
  4. 新しく収納を増やす場合は、総務の承認を必要にする

最後の「収納を増やすときは承認制」は意外に効果があります。安易に収納を足せない仕組みにすると、各部署が自発的に書類を整理するようになるからです。

収納家具の選定チェックリスト

候補の収納を比較するときは、カタログの外寸と収納量だけでなく、実際の使い勝手や将来の変更にも目を向けて確認します。発注前に次の項目を一通りチェックしておくと、入居後の「思っていたのと違う」を防げます。

  • 内寸(有効幅・有効奥行き)に、実際に入れるファイルや箱が収まるか
  • 棚板の高さを変えられるか、段数を増やせるか
  • 扉の開き方と、開いたときに通路をふさがないか
  • 鍵の方式(共通キー・個別キー・暗証番号など)と、マスターキーの有無
  • 上下・左右の連結や、床・壁への固定に対応しているか
  • 追加購入するときに同じシリーズが手に入りやすいか
  • 天板の上を作業台や打ち合わせに使う場合、高さと耐荷重が合うか
ここがポイント

「同じシリーズを後から追加できるか」は見落とされがちです。シリーズが変わると高さや色がそろわず、連結もできなくなるため、増設の可能性がある場合は定番のシリーズを選んでおくと安心です。

将来のレイアウト変更に備える

組織変更や増員でレイアウトは数年ごとに変わります。収納を「動かせない前提」で計画すると、そのたびに大がかりな工事や買い替えが必要になります。

考え方 具体例
動かしやすい単位にする 背の高い一体型より、上下に分けられるタイプを選ぶ
固定方法を選ぶ 移設しやすい金具や連結方法を優先する
規格をそろえる 幅や奥行きを統一し、どこに移しても並べられるようにする

将来の変化を見越して、収納量にも余白を残しておくと、組織変更時に「収納が足りないから買い足す」という場当たり的な対応を減らせます。

収納の素材と仕上げの選び方

収納家具の素材は、見た目だけでなく耐久性や用途にも関係します。執務室でよく使われるのはスチール製と木製(化粧板)で、それぞれに向き不向きがあります。

素材 特長 向いている場所
スチール 丈夫で重量物に強く、マグネットが使える 書類の多い部署、書庫、バックヤード
木製・化粧板 温かみがあり、空間になじみやすい 来客の目に触れるエリア、役員室、ラウンジ

色は天板や床、壁の色とのバランスで決めます。収納の面積は意外に大きいため、白やグレーなど明るめの色を選ぶと、空間を広く見せる効果があります。

よくある質問

Q. 書類が多すぎて、どこから手をつければいいかわかりません。

まず部署ごとにファイルメーターで量を測り、保存年限を過ぎた書類の廃棄から始めるのが効果的です。量が見えるだけで、削減目標や必要台数の議論がしやすくなります。

Q. 収納の高さは全部そろえたほうがよいですか。

見た目は整いますが、すべて高い収納にすると圧迫感と転倒リスクが増します。壁際は高め、島周りはH1,050前後の低めと、場所によって使い分けるのがおすすめです。

Q. 賃貸ビルでも収納を床や壁に固定できますか。

ビルごとに規定が異なるため、まず管理会社に工事の可否を確認します。床に穴をあけられない場合は、連結や突っ張り式の器具など、建物を傷めない方法を組み合わせて検討します。

Q. 移動書架を入れたいのですが、注意点はありますか。

重量が集中するため、床の許容荷重の確認が欠かせません。レール敷設の工事や、退去時の原状回復についても事前にビル側と確認しておきましょう。

Q. ラベルの表示はどこまで細かくすべきですか。

部署名・管理担当者・大まかな中身(例:契約書 前年度分)が分かれば十分です。細かすぎると更新されなくなるため、続けられる粒度にするのがポイントです。

Q. スチールと木製の収納を混在させても問題ありませんか。

問題ありません。来客の目に触れる場所は木製、書類の多い場所はスチールと使い分けるのは一般的な方法です。色味や高さをそろえると、統一感を保てます。

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