オフィス空調の基礎知識

オフィス空調の基礎知識|電気式・ガス式、個別方式・セントラル方式、空冷・水冷の違い

オフィスの空調は「エアコン」とひとことで言っても、建物によって仕組みがまったく違います。仕組みを知らないままレイアウトを変えると、「会議室だけ冷えない」「工事できる業者が限られていた」といった問題が起きます。

この記事では、オフィス空調の代表的な方式と、それぞれのメリット・注意点を整理します。

空調は内装工事の中でも費用と工期への影響が大きい設備です。方式・能力・工事区分の3点を早めに把握しておくと、レイアウト計画の手戻りを防げます。

結論

オフィスで最も一般的なのは、電気式(EHP)・冷媒を使う個別方式・空冷式の室外機の組み合わせです。ガス式(GHP)やセントラル方式、水冷式は施工できる業者が限られるため、レイアウト変更の前に既存の資料や機器の型番で方式を確認することが欠かせません。

会議室を新設するときは、空調の能力と吹出口の位置を必ず確認する
会議室を新設するときは、空調の能力と吹出口の位置を必ず確認する

動力源:電気式とガス式

方式 メリット デメリット 選ばれやすい場所
電気式(EHP) 導入費用・維持費が安い 電気代が高くなることがある。暖房能力はガス式より弱め 一般的なオフィス
ガス式(GHP) 電気代が安い。暖房能力が高い。停電時の事業継続に対応しやすい 導入費用・ガス代が高い。定期的なメンテナンスが必要 病院・福祉施設、電気の容量が足りない建物、事業継続を重視する建物

制御の方式:個別方式とセントラル方式

方式 メリット デメリット
個別方式(冷媒を使う) 部屋ごとに運転・温度設定ができる。工事費を抑えやすく、省スペース 換気機能はない。設置場所に制約がある
セントラル方式(建物全体) 建物全体の温度が均一になり、運転音も気になりにくい 工事費が高い。故障の影響が大きい。部屋ごとの細かい調整が難しい
ここがポイント

セントラル方式のビルでは、残業時の空調が有料になったり、部屋ごとの温度調整ができなかったりします。入居前に運転時間や費用のルールを確認しましょう。

大会議室は人数が多く、冷房の負荷が大きくなる
大会議室は人数が多く、冷房の負荷が大きくなる
天井の設備は、照明・空調・防災設備が密集している
天井の設備は、照明・空調・防災設備が密集している

室外機の冷却方式:空冷式と水冷式

方式 メリット デメリット
空冷式 工事規模・費用を抑えられ、設置場所を選ばない。衛生管理が不要 外気温の影響を受ける。運転音がある
水冷式 外気温の影響を受けにくく、短時間で冷える。静か 工事規模・費用が大きい。水質管理などの定期メンテナンスが必要

レイアウト変更のときに確認すること

  • 既存の空調の方式と、機器の型番(同じメーカーでも方式がさまざま)
  • 天井裏の高さ(ダクトや配管を通せるか)と点検口の有無
  • 室外機の能力に余裕があるか(室内機を増やせるか)
  • ビル側で一括管理しているか(B工事になるか)

会議室の新設時の空調の考え方は、「会議室・個室をつくる前に知っておきたい天井設備と法律」で詳しく解説しています。

天井の照明と空調
天井の照明と空調

空調と換気は別の設備

オフィスの空気環境は、温度を調整する「空調」と、外気を取り入れて汚れた空気を排出する「換気」の2つで成り立っています。個別方式の空調機は室内の空気を冷やしたり温めたりするだけで、基本的に換気の機能はありません。換気は別の設備で行うのが一般的です。

設備 役割 レイアウト変更時の注意
空調機(室内機) 室温の調整 部屋を区切ると、能力や吹出口の位置が合わなくなる
換気設備 外気の取り入れ・排気 個室をつくると、その部屋の換気量が不足することがある
熱交換型の換気設備 換気しながら熱のロスを抑える 給気口と排気口の位置関係を確認
ここがポイント

会議室で「空調は効いているのに息苦しい」と感じる場合、原因は温度ではなく換気不足であることが多いです。二酸化炭素濃度を測ると、換気の状態を客観的に確認できます。

冷房の負荷はどこから生まれるか

空調機の能力が足りているかどうかは、部屋の中でどれだけ熱が発生するか(負荷)で決まります。同じ広さでも、使い方によって必要な能力は大きく変わります。

  • 人の体温:会議室や研修室など、人が密集する部屋は負荷が大きい
  • OA機器:PC・モニター・複合機・サーバーなどの発熱
  • 照明:照明の種類や台数による発熱
  • 日射:窓からの日差し。方角や窓の大きさで差が出る
  • 外気:換気で取り入れる外気の温度・湿度

執務エリアを会議室に変える、席を増やして人を詰める、サーバーラックを置く、といった変更は、空調の負荷を大きく変えます。レイアウト変更の際は、使い方の変化も設備業者に伝えて能力を確認してもらいましょう。

工事区分と費用・工期の考え方

テナントビルでは、空調工事の発注者や施工業者が「工事区分」によって決まっていることが一般的です。区分によって、費用の負担者や業者の選び方が変わるため、計画初期に確認が必要です。

区分の目安 内容 テナント側の注意点
ビル側が発注・負担 建物本体の設備 基本的に変更できない
テナントが負担し、ビル指定業者が施工 専有部の空調の移設・増設など 見積の比較がしにくく、費用が高くなることがある
テナントが発注・負担 家具や一部の内装など ビルの承認が必要な場合がある
ここがポイント

区分の呼び方や範囲はビルによって異なります。空調の移設・増設はビル指定業者の工事になることが多いため、見積と日程の調整に時間がかかることを見込んでおきましょう。

メンテナンスと更新時期

空調機は長く使う設備ですが、性能を保つには日常的な手入れと定期的な点検が欠かせません。手入れを怠ると、効きが悪くなるだけでなく、電気代の増加や異臭・異音の原因にもなります。

  1. フィルターの清掃を定期的に行う(使用環境に応じて頻度を決める)
  2. 専門業者による内部洗浄・点検を計画的に実施する
  3. 業務用の機器は、法令にもとづく点検が必要な場合があるため、管理者に確認する
  4. 異音・水漏れ・効きの低下など、不具合の兆候を記録しておく
  5. 使用年数が長くなったら、修理と更新の費用を比較する

テナント側で管理する機器か、ビル側で管理する機器かによって、手入れの担当が変わります。入居時に管理区分を確認し、担当と頻度を決めておきましょう。

省エネと快適性を両立する運用

  • 設定温度は季節ごとの目安を決め、むやみに変更しない
  • ブラインドで日射を遮り、冷房負荷を下げる
  • 使っていない会議室の空調はこまめに止める(人感センサーの活用も検討)
  • サーキュレーターで空気を循環させ、設定温度に頼りすぎない
  • 出社人数の少ない日は、使うエリアを集約する
  • 室外機のまわりに物を置かず、熱がこもらないようにする
ここがポイント

省エネを優先しすぎると、働く人の健康や生産性を損なうことがあります。温湿度の目安を守ったうえで、無駄を減らす工夫をすることが大切です。

よくある失敗と対策

失敗例 原因 対策
会議室を新設したら冷えない 間仕切りで吹出口・吸込口が分断された 工事前に空調の配置を図面で確認
サーバー置き場が高温に 専用の空調を設けなかった 発熱量を確認し、専用の冷却を検討
工事の見積が想定より高い ビル指定業者の工事だった 工事区分を計画初期に確認する
入居後に夜間・休日の空調費がかさむ 時間外運転の費用を確認していなかった 入居前に運転時間と費用のルールを確認

空調のトラブルは、入居後に気づいても対策に時間と費用がかかります。レイアウトを決める段階で、設備業者による現地調査を行うことをおすすめします。

入居前の内見で確認したい空調チェックリスト

移転先を選ぶ段階で空調の条件を確認しておくと、入居後の不満や想定外の費用を大きく減らせます。内見時には、図面と現地の両方で次の項目を確かめましょう。

確認項目 確認のしかた
空調の方式 ビル管理者への質問、機器の銘板や資料
温度調整の単位 リモコンの数と、どの範囲を制御しているか
運転時間と時間外の扱い 管理規約や運転ルールの資料
室外機の設置場所と余力 増設の可否をビル側に確認
換気設備の有無と能力 給気口・排気口の位置、設備資料
窓の方角と日射 時間帯を変えて現地を確認
ここがポイント

内見の時点で確認しきれない項目は、契約前に書面で回答をもらっておくと、後から条件の食い違いが起きにくくなります。

よくある質問

Q. 個別方式の空調でも換気は必要ですか?

必要です。個別方式の空調機は基本的に換気の機能を持たないため、別に換気設備が必要です。ビルの換気設備の能力も確認しましょう。

Q. 空調機の能力が足りているかはどうやってわかりますか?

部屋の広さだけでなく、人数や機器、日射などの条件で必要な能力が変わります。正確な判断には、専門の業者による負荷の確認が必要です。

Q. レイアウト変更で空調を移設するのに、どれくらい期間がかかりますか?

工事の規模やビルの手続きによって異なります。指定業者の手配や承認に時間がかかることもあるため、早めに相談しましょう。

空調の方式や工事の可否は、建物ごとに異なります。工事の前には、専門の業者による現地調査をおすすめします。

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