電話・光回線の引込みルール|MDF・EPS・端子盤の工事区分と手配の流れ
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オフィス移転で意外に時間がかかるのが、電話やインターネット回線の開通です。回線の申込みは通信事業者に対して行いますが、実際の配線はビルの設備を通らなければならず、ビルごとのルールに従う必要があります。
ここでは、ビルの通信設備の基本構成と、どこまでがビル側、どこからがテナント側の工事かという区分、手配の流れを整理します。社内LANやWi-Fiの構築の前段となる「建物への引込み」の部分に焦点を当てます。
通信回線は建物のMDF(主配線盤)→各階のEPS内端子盤→テナント区画の順に引き込まれ、EPS内の端子盤までをビル側(A工事)、そこから区画内をテナント(C工事)とするのが一般的です。ビルに来ていない事業者の光回線を引く場合は空配管の有無と事前承認が必要です。開通には時間がかかるため、早めに申し込みましょう。
ビルの通信インフラの構成
オフィスビルの通信設備は、おおむね次のような構成になっています。
- MDF(主配線盤):通信事業者のケーブルが建物に引き込まれる場所。地下や1階の専用室にあることが多い
- EPS(電気シャフト):各階を縦に貫くシャフト。ビル用の共用EPSとテナント用の専用EPSに分かれていることもある
- 端子盤(弱電端子盤):各階のEPS内に設けられ、MDFからのケーブルがここまで来ている
- 光ファイバーの成端箱:事業者が設置するPD盤・PT盤など
- 空配管・ケーブルラック:EPSから区画までの配線ルート。通路の天井内にラックが用意されていることがある
指針書の電気設備の章には、メタルケーブルの実装数(例:各階の端子盤まで10ペア/テナント、100ペア/フロアなど)や、どの事業者の光ファイバーが実装済みかが書かれています。
どこまでがビル側の工事か
| 範囲 | 工事区分の例 | 備考 |
|---|---|---|
| MDF〜各階EPS内端子盤 | A工事(ビル側) | 標準仕様として実装済みのことが多い |
| 端子盤〜区画内の電話機・ルーター | C工事(テナント) | 配管・配線・機器の設置 |
| EPSから区画までの空配管 | A工事またはC工事 | ビルにより異なる。「空配管まではビル、入線は事業者」の例も |
| 実装済み事業者の光回線の区画内引込み | 事業者指定の工事会社 | 事業者と直接契約 |
| 未実装の事業者の回線をMDFから引く工事 | B工事またはC工事(要承認) | ルートと費用の確認が必要 |
| 防火区画の貫通処理 | B工事 | EPSの壁や床を貫通する部分 |
端子盤から私設交換機(PBX)の一次側までをビル指定会社の施工とするビルや、光回線のPD盤一次側までを指定会社とするビルもあります。工事区分表の「電話」「光ファイバー」「通信」の欄を必ず確認しましょう。
新しい事業者の回線を引くとき
ビルに実装されていない通信事業者の光回線を使いたい場合、MDFからテナントのEPS、区画までの新たな配線が必要になります。このとき確認すべき点は次のとおりです。
- MDFから各階への空配管や予備ルートが残っているか(将来用の空配管を数本だけ用意しているビルもある)
- 通信事業者の工事業者がMDF室やEPSに入るための立会いと作業届
- 入線工事も作業届の提出対象であること
- ケーブルラックへの共架の可否と、ラックの使い分け(電力用・通信用)
- 引込み工事の費用負担と、退去時の撤去義務
光ファイバーを区画まで直接引き込む場合は、事前に相談するよう求める指針書が多くあります。共用部の配管は他のテナントと共有するため、勝手に使うことはできません。
フロアをまたぐ配線と機器の設置場所
複数のフロアを借りる場合、フロア間をつなぐ配線が必要になります。床スラブに穴を開けて配線することは原則禁止とするビルが多く、テナント用EPS内の竪配管やラックを利用し、EPSの防火区画を貫通する部分は区画貫通処理(B工事)を行うのが一般的です。上下階の貸室を使う場合のみ使える予備配管が床に埋め込まれているビルもあります。
また、通信機器やそれに必要な設備は各テナントの区画内に設置し、共用部やEPSには設置できないとするのが原則です。ラックやルーターの置き場所は、区画内のレイアウトで確保しておきましょう。テナント用の単独接地が必要な場合も、事前の相談が必要です。
手配のスケジュール
回線の申込みは、入居企業が通信事業者に直接行います。指針書でも「電話回線や光通信の申込みは入居者側で行うこと」「開通には時間がかかる可能性があるので早めに申し込むこと」と注意を促しています。
- 物件契約後、指針書で通信設備の構成と工事区分を確認
- 利用する事業者と回線種別を決め、ビルに実装状況を確認
- 事業者に申込み(現地調査が入ることもある)
- ビルに作業届を提出し、入線工事の日程を調整
- 区画内の配線(C工事)と機器設置
- 開通試験
申込みから開通までは、条件によって数週間から2か月以上かかることがあります。入居日にインターネットが使えないと業務が止まるため、内装工事の工程と並行して早めに動きましょう。
退去時の扱い
テナントが自分で引き込んだ回線やケーブルは、退去時に撤去するのが原則です。指針書には「退去時または不要になった場合の配線は入居者にて撤去すること」「OAフロア内の配線も含めてすべて撤去」と書かれていることがあります。どのケーブルがどこにつながっているかを竣工図に残しておくと、原状回復の範囲がはっきりします。
携帯電話の電波とアンテナ
固定回線とは別に、オフィス内の携帯電話の電波状況も確認しておきたいポイントです。大規模なビルでは、主要な携帯電話事業者に対応するアンテナを共用部に設置している場合がありますが、間仕切りの影響や特定のキャリアの要望で区画内にアンテナを増設したい場合は、事前の相談が必要で、費用は入居企業の負担とされるのが一般的です。会議室を壁で囲うと電波が弱くなることもあるため、レイアウトが固まった段階で確認しておきましょう。
通信引込みのチェックリスト
- MDF・EPS・端子盤の位置と実装済みの回線を確認した
- 工事区分表で電話・光・LANの区分を確認した
- 利用する事業者がビルに実装済みか確認した
- 未実装の場合、空配管・ルート・費用を確認した
- フロア間配線の方法と区画貫通処理の区分を確認した
- 通信機器の設置場所を区画内に確保した
- 回線の申込みを内装工程と並行して進めた