飲食区画・社員食堂の厨房工事ルール|排気・グリス除去・グリストラップ・ガス

飲食区画・社員食堂の厨房工事ルール|排気・グリス除去・グリストラップ・ガス

ビルの中にカフェや飲食店を出店する、あるいはオフィスの一角に社員食堂やカフェテリアをつくる。こうした計画では、一般的なオフィス内装とはまったく違うルールが関わってきます。火を使うこと、油を含んだ排気や排水が出ること、水を大量に使うことが、ビル全体の防火や衛生に影響するからです。

ビルの設計指針書には、飲食店舗のための設計留意点がまとめられていることがよくあります。ここでは、その代表的な内容を整理します。

結論

厨房はビルが想定した区画(低層の店舗区画や社員食堂対応エリア)でしか計画できないのが一般的です。排気風量やダクトの経路、グリス除去装置とダクト消火装置、グリストラップ、防水区画などの条件が細かく決められており、消防・保健所との協議も必要になります。物件選定の段階で確認しましょう。

厨房をつくれる区画は限られている

オフィスビルの事務所フロアは、原則として火気使用を想定していません。指針書でも「厨房以外は火気を使用できない」「火気を使用する機器は設置できない」と定められ、給排水やガスの設備も一部の区画にしか用意されていないのが一般的です。

一方、低層階の店舗区画や、特定の階に設けられた社員食堂対応エリアなどには、厨房用の給排気スペース、給水・排水・通気の配管、ガス配管があらかじめ用意されています。たとえば「店舗区画に3,000㎥/h程度の厨房給排気スペースを見込む」「食堂対応エリアのみ給水50A、厨房排水100A、通気50A、都市ガスを用意」といった具合です。この想定を超える厨房を計画する場合は、個別の相談が必要になります。

排気と給気のルール

厨房の排気は、ビルが用意したダクトスペースと排気ファンの位置に合わせて計画します。

  • 想定風量:区画ごとに排気風量の上限が決められています。調理機器を増やすと、風量が足りなくなることがあります。
  • ファンの設置場所:排気ファンは屋上、給気ファンは区画の天井内などと想定位置が決まっていることがあります。ファンの設置はテナント工事となるのが一般的です。
  • 給気とのバランス:排気だけ強くすると室内が負圧になり、扉が重くなったり臭いが共用部に流れたりします。給気ファンとセットで計画します。
  • 臭気対策:臭いの出る用途は事前協議とされ、脱臭装置の設置を求められることもあります。
  • 電気配管との離隔:排気ダクトの近くに電気配管を通す場合、100mm以上離すよう求める例があります。

フードと消火設備

火を使う調理機器や、油を含む蒸気が出る機器の上には排気フードを設け、次の設備が求められるのが一般的です。

設備 役割 指針書でよく見る条件
グリス除去装置(グリスフィルター等) 排気中の油分を取り除き、ダクト火災を防ぐ テナント工事で設置し、定期的な清掃をテナントが行う
フード・ダクト用簡易自動消火装置 フードやダクト内の火災を自動で消火する 油脂を含む排気が出るフードに設置。消防と協議の上で設置・申請。指定業者施工とするビルもある
防火ダンパー 火災時にダクトを閉じて延焼を防ぐ フードごとにダンパーを取り付ける

フード内には、消火装置の働きを妨げる棚やフック、照明器具を設けないよう求められます。内装も、厨房部分は壁・天井の下地と仕上げをすべて不燃材料とし、厨房機器の規模によっては消防法上の区画が必要になります。

排水・グリストラップ・防水

厨房の排水は、油脂を含むため、そのまま流すと排水管が詰まります。そのため油脂分を含む排水は必ずグリストラップ(阻集器)を経由させます。ビルによっては床置き式を指定し、日常の点検清掃ができるよう厨房機器の配置を計画すること、メンテナンス契約をテナント負担で必ず結ぶことを求めています。

水を使う範囲には防水も必要です。ある指針では、防水区画の立上りをコンクリートブロック3段積みで形成し、湿式の防水工法でメーカーの10年保証を取得、24時間以上の水張り試験で下階への漏水がないことを確認するよう定めていました。防水した範囲の外での水の使用は禁止とされます。床を上げて排水勾配を取るため、床の高さや段差も早い段階で検討が必要です。

また、厨房の壁・天井・床には、ネズミなどの侵入を防ぐため隙間をつくらないよう求められます。

ガス・電気・給湯

  • ガス:区画の天井内にガス配管がコック止めで用意されている場合、以降の配管はテナント工事となり、ガスの契約はテナントがガス事業者と直接結びます。ガスの供給がないビルでは、電化厨房で計画することになります。
  • 電気:店舗区画の電気容量は、電灯・コンセント用と動力用それぞれに上限(例:250VA/㎡)が決められ、増設に対応できないビルもあります。IH機器や食器洗浄機は容量が大きいので要注意です。
  • 給湯器:電気給湯器に接続する給水管には、逆止弁や減圧弁を設けて配管内の圧力変動を防ぐよう求める例があります。
  • 空調:厨房は発熱が大きいため、空調の増設が必要になることが多く、室外機の設置場所も事前に確認します。

消防・保健所の手続き

飲食店や社員食堂の開設には、建物側のルールだけでなく、消防と保健所の手続きが関わります。厨房設備(火を使う設備)の設置に関する消防への届出、防火対象物使用開始届、飲食店営業許可などです。保健所の基準(手洗い設備、シンクの数、床・壁の材質など)を満たさないと営業許可が下りないため、設計段階で保健所に図面相談をしておくのが一般的です。

指針書では、こうした手続きはテナントとテナントの設計者が行うもの、と明記されています。ビル側の内装監理室は審査や調整に協力しますが、許可を取る主体はテナントです。

厨房計画のチェックリスト

  • 計画する区画で厨房・火気使用が認められているか確認した
  • 排気・給気の想定風量とダクトルート、ファン設置場所を確認した
  • グリス除去装置・ダクト消火装置・防火ダンパーの要否と施工区分を確認した
  • グリストラップの形式と清掃・メンテナンス契約を決めた
  • 防水仕様・保証・水張り試験の条件を確認した
  • ガス供給の有無、電気容量の上限を確認した
  • 消防・保健所との事前協議の時期を工程に入れた

ビルの工事ルールの確認や、指針書に沿った工事計画・見積のご相談も承ります。

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