在館者密度と用途制限|「何人入れるか」「何に使えるか」はビルが決めている
共有
オフィスのレイアウトを考えるとき、「この広さなら何席置けるか」は家具の寸法と通路幅から計算するのが普通です。しかしビルによっては、それとは別に「このフロアには何人まで」という目安が決められていることがあります。また、借りた区画を何に使ってもよいわけではなく、用途にも制限があります。
これらは、ビルの避難計画や空調・換気の設計の前提になっている数字です。ここでは、在館者密度と用途制限の考え方、計画段階で注意したい点を解説します。
ビルの避難計画や空調設計は「1㎡あたり何人いるか」という在館者密度を前提にしています。一般事務所の目安を大きく超える席数や、研修室・コールセンターのような高密度の使い方は事前相談が必要です。用途も事務所とそれに付随する用途に限られ、騒音・臭気・火気・危険物を伴う用途は原則認められません。
ビルが人数と用途を制限する理由
ビルの設計では、各フロアに何人いるかを想定して、避難階段の幅や避難にかかる時間、排煙設備、空調・換気の能力を決めています。特に、避難安全検証法で国土交通大臣の認定を受けたビルでは、「居室にいる人が煙が降りてくる前に避難を終えられるか」を計算しており、その計算の前提が在館者密度です。
想定より多くの人がフロアにいると、避難に時間がかかり、計算上の安全性が確保できなくなります。また換気量が足りず、二酸化炭素濃度が上がって空気環境が悪くなります。用途についても、騒音・臭気・火気・危険物などを伴う用途は、他の入居者の安全や快適性を損なうため制限されています。
在館者密度の目安
ある事務所ビルの指針書では、室の用途に応じた在館者密度として次の基準が示され、貸室内の収容人員を算出して一覧表で提出するよう求めていました。
| 室用途 | 在館者密度 | 想定される室の例 |
|---|---|---|
| 一般事務所 | 0.125人/㎡ | 一般執務室、会議室、クリニック診察室 |
| 高密度事務所 | 0.25人/㎡ | 人材派遣会社の事務所、コールセンター |
| サービス店舗 | 0.25人/㎡ | 銀行や証券会社の店舗、クリニック待合 |
| 展示室 | 0.5人/㎡ | ショールーム、スクール |
| 飲食施設 | 0.7人/㎡ | 社員食堂、セミナールーム、貸会議室 |
| 倉庫 | 0人/㎡ | ロッカールーム、サーバールーム、物置 |
一般事務所の0.125人/㎡は、8㎡に1人の計算です。100坪(約330㎡)のフロアなら、約41人が目安になります。実際のオフィスではこれより多くの席を置くことも珍しくありませんが、執務椅子の数がこの値を大きく超える計画の場合、プランの変更を求められることがある、と注意書きがされています。
空調・換気の設計条件としても、人員密度0.15〜0.2人/㎡、外気量25〜30㎥/h・人といった数字が指針書に示されています。これを超える人数を入れる会議室や研修室では、換気量不足にならないよう給排気の増設が必要になることがあります。
席数の多いレイアウトの注意点
フリーアドレスで在籍人数より席数を減らす企業がある一方、コールセンターや研修施設、オペレーションセンターのように、高い密度で人が座る使い方もあります。こうした計画では、次の点を早めに確認しましょう。
- 収容人員の一覧表:室ごとの面積と人数を整理し、基準と比べる
- 避難経路と出入口:人数が多い室は、出入口の数や扉の幅、開き勝手に条件が付くことがある(避難人数の多い食堂は外開き、など)
- 換気量:会議室・研修室の換気量を計算し、不足すれば給排気口の増設を検討する
- 上下階への影響:同じ避難階段を使う上下階の人数にも影響するため、複数フロアに入居する場合は特に注意する
- 空調能力:人の発熱とパソコンの発熱で冷房能力が不足することがある
セミナールームや大会議室は、普段は空いていても、満席時の人数で評価されます。可動間仕切りで2室を1室にする使い方も、最大人数で考えておく必要があります。
使える用途の制限
事務所ビルの貸室で計画できるのは、事務所と事務所に付随する用途に限られるのが一般的です。指針書で想定用途として挙げられている例は、事務室、会議室類、ショールーム、教室類、サービス店舗(銀行、理美容など)、クリニック(入院・透析を行わないもの)、倉庫などです。
一方、次のような用途や使い方は、原則として認められないか、事前協議が必要です。
- 騒音・振動・臭いの発生する用途や機器(例:70dB以上の騒音を伴うもの)
- 厨房以外での火気の使用
- 爆発のおそれのあるもの、揮発性のもの、大量の薬品、放射性物質を扱う実験室や収納室
- 危険物の持ち込み・貯蔵(業種によって必要な場合は協議)
- 賃貸借契約で定めた用途以外での利用
また、居室は3㎡以上となるよう計画する、といった細かな条件を設けるビルもあります。
可燃物の多い倉庫・書庫に注意
耐火性能検証法で認定を受けたビルでは、柱や梁の耐火被覆の厚さを、室内で燃える物の量(可燃物量)を前提に計算しています。そのため、集密書架を並べた書庫や段ボールを大量に置く倉庫など、可燃物が著しく多い用途は、使える面積に制約が付くことがあります。
書庫や倉庫を廊下に面して設ける場合、その扉に防火設備としての性能を求められる例もあります。紙の書類を大量に保管する計画があるなら、文書の電子化や外部倉庫の利用もあわせて検討すると、制約を受けにくくなります。
計画段階での確認方法
- 指針書の「用途の制限」「在館者密度」「避難計画」の項目を読む
- 室ごとの用途・面積・最大人数を一覧にする
- 基準を超える室、特殊な用途の室を抽出し、内装監理室に相談する
- 必要に応じて、避難安全検証のチェックリストや換気計算に反映する
- 基本設計図の段階で承認を得てから、家具の発注に進む
避難安全検証のやり直しが必要になると、費用と期間がかかります。席数やセミナールームの規模は、レイアウトの初期段階で確認しておきましょう。
計画前のチェックリスト
- ビルの在館者密度の基準と提出書類の有無を確認した
- 室ごとの用途・面積・最大人数を一覧にした
- 研修室・食堂・セミナールームなど高密度の室の扱いを相談した
- 換気・空調の設計条件(人員密度・外気量)を確認した
- 計画する用途が賃貸借契約・指針書の想定用途に含まれるか確認した
- 書庫・倉庫の面積と可燃物量の制約を確認した