家具・什器にもビルのルールがある|不燃・防炎・転倒防止と防災設備との干渉

家具・什器にもビルのルールがある|不燃・防炎・転倒防止と防災設備との干渉

家具は内装工事とは別に、入居企業が自由に選んで置けるもの――そう思われがちですが、ビルの指針書を読むと、家具・什器についてのルールが意外に多く書かれています。素材、固定方法、高さ、置き場所まで、ビルの防災計画と深く関わっているからです。

せっかく選んだ家具が、消防検査で指摘されたり、固定できずに使えなかったりしないよう、ここでは家具・什器に関するビルの代表的なルールを整理します。

結論

避難安全検証や耐火性能検証を受けたビルでは、什器・備品は鋼製または不燃材が原則で、布製品は防炎品を使います。転倒防止では天井への固定やA工事壁への固定が禁止されることが多く、OAフロアへのビス止めも自立のための固定には使えません。スプリンクラー・感知器・誘導灯・避難経路を妨げない配置が求められます。

なぜ家具にまでルールがあるのか

大規模なオフィスビルの多くは、避難安全検証法や耐火性能検証法によって、防火区画や排煙設備、耐火被覆などの緩和を受けて建てられています。これらの検証では、室内に置かれる物の燃えやすさ(可燃物量)や、人が避難する経路を前提に安全性を計算しています。

そのため、木製の大型家具を大量に置いたり、避難経路を家具でふさいだりすると、ビルの安全性の前提が崩れてしまいます。また、天井のスプリンクラーや煙感知器、壁の誘導灯は、家具の配置次第で機能を妨げられます。家具のルールは、ビル全体の防災計画を守るためのものなのです。

材料のルール:不燃・防炎

指針書でよく見られる家具・什器の材料ルールは次のとおりです。

  • 什器・備品は鋼製または不燃材で作られたものを使う:建物内の不燃化を進めるため、とされています。椅子やローパーティションなど、やむを得ないものは個別に相談します。
  • 布製品は防炎品:カーテン、ブラインド、じゅうたん・カーペット、造作の椅子、固定式ローパーティションなどの布製品は防炎加工品とし、防炎ラベルを取り付けます。
  • 造作家具は内装扱い:受付カウンターや壁面収納などの造作は、内装制限の対象として不燃・準不燃材料が求められることがあります。木材の使用を床と置き型什器以外認めない商業施設の例もあります。

木目調の家具を使いたい場合は、スチール製で木目柄の天板を使ったものや、不燃認定を受けた化粧材を使ったものを選ぶと、ルールとデザインを両立しやすくなります。

転倒防止の固定方法

地震対策として家具の転倒防止は欠かせませんが、ビルによって使える固定方法が制限されています。

固定方法 よくあるルール
天井への突っ張り・固定 システム天井は荷重に耐えられないため、天井への固定は不可とするビルが多い
A工事壁・柱への固定 区画壁や柱(耐火被覆)にビスやアンカーを打つことは原則禁止。手前にC工事の壁を設ける
OAフロアへのビス止め パネルの中央付近へのビス止めは可能でも、自立させるための固定は不可。床パネル自体が動くため
床スラブへのアンカー 事前協議が必要。深さの制限(例:40mm以下)が付くことも

そのため、書架やキャビネットは連結して背中合わせにする、幅広の脚や重心の低い製品を選ぶ、上下を連結して一体化する、といった方法で転倒を防ぐのが一般的です。移動書庫や金庫などの重量物は、床の耐荷重の確認と重量物設置の申請が必要です。

防災設備との干渉

  • スプリンクラー:ヘッドの周囲(例:水平方向300mm、下方450mm)には物を置けないとするビルがあります。背の高い書架やパーティションが散水を妨げると、ヘッドの増設が必要になります。
  • 煙感知器:天井近くまである家具やパーティションで空気の流れが遮られると、感知が遅れることがあります。
  • 誘導灯:背の高い家具で誘導灯が見えなくなると、通路誘導灯の追加が必要になることがあります。
  • 消火器・点検口・排煙操作ボックス・分電盤:前に家具を置かず、操作や点検ができる状態を保ちます。

指針書では「什器・備品により防災設備に障害が発生する場合があるので、設計図書に明記すること」とされています。高さ1.8mを超える家具や、天井近くまである収納は、図面に記載して事前に確認を受けましょう。

避難経路と窓際

家具の配置は、避難経路の確保とも直結します。専有部内の通路幅は、片側に居室がある場合1.2m以上、両側の場合1.6m以上、あるいは基本1.4m以上といった基準が指針書に示されています。避難階段への動線を確保した配置にすること、防火戸や防火シャッターの周辺に物を置かないことも求められます。

窓際にも注意が必要です。外周のサッシから一定範囲(例:1m)を間仕切りや大型家具でふさがない、エアフローウィンドウの下部の隙間をふさがない、窓の清掃や開閉機構の操作に支障のある什器を置かない、といったルールがあります。窓ガラスに近づけすぎると熱割れの原因になることもあります。

また、ビルの外から見える窓際や外壁近くの柱に、社名やロゴを掲示することを禁止しているビルも多くあります。窓際にサインを兼ねた家具やディスプレイを置く場合は、事前に確認しましょう。

検査と図面への記載

建築の完了検査や消防検査は、家具を設置した状態で受けるのが基本とするビルがあります。家具の配置によって避難経路や散水障害の判断が変わるためです。家具の納品が検査に間に合わないと、検査をやり直す必要が出ることもあります。

基本設計・実施設計の平面図には、什器・家具・造作物の配置を記入するよう求められるのが一般的です。家具の選定は内装工事と別の担当者が進めることも多いため、設計者と家具担当が早い段階で情報を共有しておきましょう。

家具選定のチェックリスト

  • ビルの指針書で什器・備品の材料ルールを確認した
  • カーテン・カーペット・布張り家具の防炎品と防炎ラベルを確認した
  • 転倒防止の固定方法(天井・壁・OAフロア)の可否を確認した
  • 重量物の重さと設置場所を確認し、必要な申請をした
  • 背の高い家具とスプリンクラー・感知器・誘導灯の位置関係を確認した
  • 通路幅・避難経路・窓際・点検口の前を確保した
  • 家具の配置を設計図に反映し、検査日までに納品できるよう手配した

ビルの工事ルールの確認や、指針書に沿った工事計画・見積のご相談も承ります。

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