承認後の設計変更はどう扱われる?|設計変更依頼書と無断変更のリスク
共有
内装工事が始まってから、「会議室をもう1つ増やしたい」「この壁をガラスにしたい」といった変更が出てくるのは、よくあることです。社内の要望が具体的になるのは、図面よりも現場を見てからという面もあります。
しかしビルの中の工事では、変更は簡単ではありません。ビルの内装監理室が審査・承認した図面から変える場合には、改めて手続きが必要で、内容によっては大きな費用と時間がかかります。ここでは、承認後の設計変更の扱いと、トラブルを避ける進め方を解説します。
ビルが承認した実施設計図からの変更は原則として認められず、やむを得ない場合は変更前後の図面と設計変更依頼書を提出して再承認を受けてから施工します。無断で変更すると、テナント負担でやり直しを求められます。変更はB工事・消防届・避難安全検証に波及しやすいため、基本設計の段階で要望を固めることが重要です。
なぜ設計変更が嫌われるのか
ビルの内装監理室は、テナントの設計が建築基準法・消防法やビルの避難計画、設備の能力に適合しているかを審査し、B工事の範囲を確定させます。そのうえでB工事の設計・見積・発注が進み、消防への届出の準備も始まります。承認後に変更があると、これらをすべてやり直さなければならない可能性があります。
また、同じ時期に複数のテナントが工事をしている場合、一つの変更がビル全体の工程や、共用の設備(空調・防災)に影響することもあります。そのため多くの指針書は「実施設計図書提出以降の設計変更は受け付けない」「承認図からの設計変更は原則として認めない」と明記しています。
やむを得ない場合の変更手続き
それでも変更が必要になったときは、次のような手順をとるのが一般的です。
- 変更内容が決まった時点で、速やかに内装監理室(管理会社)に報告し、相談する
- 「設計変更依頼書」などの様式に、変更の理由と内容を記入する
- 変更前と変更後の図面を添付する。変更箇所は赤字などで明示する
- 内装監理室の審査を受け、承認を得る
- B工事や届出に影響がある場合は、その手続きもあわせて行う
- 承認後に施工する
指針書によっては、変更後の実施設計図書を基本と同じ部数(例:6部)添付するよう求めるものもあります。施工会社が入居者や設計者から変更の要請を受けたときは、速やかに管理事務室へ報告し、その指示に従って調整するよう定める例もあります。
変更が波及する範囲
一見小さな変更でも、思わぬところに影響が出ます。
| 変更の例 | 波及しやすい項目 |
|---|---|
| 天井までの間仕切りを追加 | 感知器・スプリンクラー・非常放送・誘導灯・排煙の増設(B工事)、空調吹出口の移設、換気量 |
| 部屋の用途を変更(倉庫→会議室など) | 在館者密度、避難安全検証、換気量 |
| 扉の位置・幅・開き勝手を変更 | 避難経路、歩行距離、バリアフリー条件 |
| 床の仕上げを石やフローリングに変更 | 下階への遮音、床荷重 |
| 背の高い家具を追加 | スプリンクラーの散水障害、誘導灯の視認性 |
| 水回りを追加 | 防水、給排水の接続、漏水対策 |
B工事は指定業者による設計・見積・発注が必要で、機器の納期も含めると数か月かかる場合があります。消防への着工届・設置届を出し直す必要も出てきます。避難安全検証を受けたビルでは、検証のやり直しに費用と期間がかかり、その費用はテナント負担とされるのが一般的です。
無断変更のリスク
承認を得ずに図面と違う施工をした場合、指針書では次のような扱いが定められています。
- テナント負担で、ビルの指示に従ってやり直す
- ビルの指示に従わない場合、ビル側で撤去し、その費用を請求する
- 完了検査で、提出図面から大幅に変更している部分に改善指示を出す。特に防災設備や避難経路に支障があるものは早急に手直し
- 官庁検査で是正を求められた場合、テナント負担で速やかに対応する
現場で「このくらいならいいだろう」と判断した変更が、消防検査で指摘されて入居日に間に合わなくなる、というのが最も避けたい事態です。
変更を減らすための進め方
- 基本設計の段階で要望を出し切る:社内のヒアリングやアンケートは基本設計の前に済ませ、部門の要望を集約しておきます。
- 実物やパースで確認する:ガラス間仕切りの見え方、家具の高さなどは、ショールームやパース、サンプルで確認してから決めます。
- 決裁の締切を決める:社内の承認者に「この日を過ぎると変更は大きな費用と遅れにつながる」ことを共有し、締切を明確にします。
- 将来の変更を見込んだ設計にする:天井の手前で止める間仕切りや、可動間仕切りを使うと、防災設備の変更を伴わずにレイアウトを変えやすくなります。
- 家具の配置も図面に入れる:背の高い家具や重量物は、承認図に記載しておきます。
工事中の変更と工事後の変更の違い
変更のタイミングによって、必要な手続きも変わります。工事中であれば、設計変更依頼書による再承認で済むことが多いですが、工事完了後・入居後の変更は、新たな工事として最初から申請し直すことになります。消防への届出も改めて必要です。
「とりあえず今の図面で工事を終わらせて、入居後に変えればいい」という判断は、手続きと費用が二重になるため、結果的に高くつくことがあります。逆に、入居後しばらく使ってみないと決められない部分(集中ブースの数、収納の量など)は、天井まで達しない間仕切りや置き家具で対応できるよう、あえて工事の範囲から外しておくのも一つの方法です。
どちらにしても、変更の影響を最も正確に判断できるのは、ビルの内装監理室と設計者です。社内で結論を出す前に、「この変更をするとどんな手続きと費用がかかるか」を早めに問い合わせる習慣をつけておきましょう。
設計変更のチェックリスト
- 指針書で設計変更の扱いと様式を確認した
- 変更内容を内装監理室に事前相談した
- 変更前後の図面(変更箇所を明示)を用意した
- B工事・消防届・避難安全検証への影響を確認した
- 変更に伴う費用と工期の増加を社内で承認した
- 承認を得るまで現場で施工しないよう施工会社に伝えた