停電時の電源確保とビルのルール|非常用発電機・保安回路・UPS設置の注意点
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「このビルには非常用発電機があるから、停電してもサーバーは大丈夫」――そう考えていたら、実際は発電機が防災設備専用で、テナントには電気が来なかった、という話はよくあります。ビルの非常用電源が何のために、どこまで使えるのかは、指針書を読まなければ分かりません。
ここでは、ビルの非常用発電機と保安回路の考え方、テナントがUPSや専用発電機を設置するときのルールを、指針書でよく見る記載をもとに整理します。
多くのビルの非常用発電機はスプリンクラーや排煙、非常照明などの防災設備用で、テナントには供給されません。テナント向けの保安回路があるビルでも、切替え時に一時停電し、火災時には供給されないのが一般的です。無瞬断が必要な機器にはテナント負担でUPSを設置し、重量・発熱・蓄電池の種類と容量について事前に協議します。
ビルの非常用発電機は誰のためのものか
ビルの非常用発電機には、大きく分けて2つの役割があります。一つは、火災時にスプリンクラーのポンプ、排煙機、非常用エレベーター、非常照明などの防災設備を動かすこと。もう一つは、停電時にビルの一部の機能やテナントの重要な機器に電気を送る保安用の役割です。
指針書を見ると、「ビル共用部の防災設備用を目的とした非常用発電機のみ。テナント専用の非常用発電機はない」と明記しているビルが少なくありません。この場合、停電すれば区画内の照明もコンセントも止まります。物件選定の段階で、どちらのタイプかを確認しておくことが重要です。
また、防災センターについては、災害時にもコンセント・照明・空調が使えるよう計画されているビルが多い一方、テナント区画は対象外ということもあります。「ビルとして停電対策がされている」ことと「自社の区画で電気が使える」ことは別だと考えて、指針書の電気設備の章を確認しましょう。
保安回路の特徴と使い方
テナント向けの保安回路を用意しているビルもあります。指針書に書かれている条件の例をまとめると次のようになります。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 供給容量 | 15VA/㎡程度(一般コンセントの数分の一) |
| 供給時間 | 72時間程度を想定 |
| 切替え時 | 発電機の立ち上がりまで約1分程度の停電が発生する |
| 火災時 | 火災と停電が同時に起きた場合は、防災設備が優先され供給されない |
| 工事区分 | 共用EPSのブレーカーから区画内に幹線を敷設し、分電盤を設けるのはテナント工事 |
保安回路から電源を取る場合は、図面に「保安回路」であることを明記し、コンセントには回路番号を表示して一般回路と区別するよう求める例があります。保安回路で照明を点灯させる場合は、停電時に非常照明と同様の扱いとなり、床面の照度基準を満たす必要がある、と定めるビルもあります。どの機器を保安回路につなぐか、容量の範囲内で優先順位を決めておきましょう。
無瞬断が必要ならUPSを設置する
保安回路は切替え時に一時的に停電するため、サーバーやネットワーク機器など、瞬時の停電も許されない機器にはUPS(無停電電源装置)が必要です。多くのビルでは、テナント用のUPSは用意しておらず、「必要な場合はテナント負担で専有部内に設置すること」とされています。
UPSを設置するときの主な注意点は次のとおりです。
- 重量:蓄電池は非常に重く、床の耐荷重やOAフロアの許容荷重を超えることがあります。設置位置の確認が必要です。
- 発熱:UPS本体とサーバーの発熱に対し、空調能力が足りるか検討します。
- 蓄電池の種類:密閉型の蓄電池を使うよう指定されるのが一般的です。
- 容量による規制:設置する容量によっては、蓄電池設備として個別の防火区画や消火設備(B工事)、消防への届出が必要になる場合があります。
テナント専用発電機を置く場合
データセンター並みの電源の信頼性が必要な企業のために、屋上や駐車場棟などにテナント専用発電機の設置スペースを用意しているビルもあります。指針書では「300kVA×1台分のスペース」「500kVA×2台分と燃料タンクスペース(8時間相当)」といった形で示されています。
ただしスペースは限られており、他のテナントとの調整やビル設備との取り合いの協議が必要です。燃料の貯蔵は危険物の規制にかかわり、設置・維持管理・燃料補給の費用はすべてテナント負担になります。BCPの観点から専用発電機が必要な場合は、物件選定の早い段階でビル側に相談しましょう。
照明や電気錠は停電時どうなるか
停電時の影響は、パソコンやサーバーだけではありません。区画内の照明は、非常照明以外は消えてしまいます。保安回路から照明を取っているビルでは、停電時(火災時を除く)にビルの発電機で点灯する保安照明が、基準照明の約25%程度の照度で設けられている例もあります。
電気錠やカードリーダーも、停電時には施錠・解錠の動作が変わります。停電時に扉が開放されるのか施錠されたままなのか、非常時の脱出に問題がないかを確認し、必要であれば電気錠の電源をUPSや保安回路から取る計画を検討しましょう。防犯設備との連動もあわせて確認が必要です。
ビルの年次点検停電に備える
ビルでは、電気設備の法定点検のために年1回程度の停電作業が行われます。指針書にも「ビルの電気設備点検のため、停電作業(電灯・動力とも)が発生する」と書かれていることがあります。点検停電は休日に行われるのが一般的ですが、サーバーや冷蔵設備を止めずに済むよう、UPSのバッテリー時間や、仮設発電機の手配を検討する企業もあります。
停電の前後には、機器のシャットダウンと再起動、電気錠やセキュリティの動作確認が必要です。担当者と手順を決めておくと、点検のたびに慌てずに済みます。
電源確保のチェックリスト
- ビルの非常用発電機が防災用のみか、テナント保安用があるか確認した
- 保安回路の容量・供給時間・切替え時の停電・火災時の扱いを確認した
- 保安回路につなぐ機器と優先順位を決めた
- UPSの容量・重量・発熱・蓄電池の種類を確認した
- UPSの容量による防火区画・届出の要否をビルに相談した
- 専用発電機の必要性とスペースの有無を確認した
- 年次点検停電の予定と、機器の停止・復旧手順を決めた