入退室管理システムの選び方

入退室管理システムの選び方|電池錠と電気錠の違い、認証方式、導入前のチェック項目

オフィスのセキュリティの基本は「誰が、いつ、どこに入ったか」を管理することです。最近は、カードや顔認証で扉を開ける入退室管理システムが、中小規模のオフィスにも広がっています。

この記事では、入退室管理システムの種類と、導入前に確認すべき項目を解説します。

後半では、セキュリティのゾーニングと権限の設計、非常時の動作、扉と錠の相性、カード紛失や退職者への対応といった運用ルール、履歴の活用方法まで、導入後に「こんなはずでは」とならないためのポイントをまとめています。

結論

扉が1〜2か所で履歴が不要なら、配線工事のいらない電池錠が手軽です。利用人数が多い(目安として20名以上)、入室と退室の両方を管理したい、履歴を残したい場合は、配線工事を伴う電気錠と管理システムを選びます。

応接室は来客エリアに置き、執務エリアとの境界に入退室管理を設ける
応接室は来客エリアに置き、執務エリアとの境界に入退室管理を設ける

電池錠と電気錠の違い

項目 電池錠 電気錠
動力 乾電池(配線不要) 電源(配線工事が必要)
工事 短時間で比較的安価 壁の中の配線が必要。費用は高め
向いている場所 扉が少なく、通行人数が多くない場所 人数・通行回数が多い場所、複数の扉
管理 入室のみ。電池交換が必要 入室・退室の両方、履歴の管理、停電時の動作設定も可能
ここがポイント

電気錠は、停電時に「解錠する」か「施錠を保つ」かを選べます。避難が優先される扉は解錠、防犯が優先される扉は施錠と、扉ごとに設定を考えます。

認証方式の比較

方式 メリット 注意点
テンキー(暗証番号) カードが不要 番号の漏えい。定期的な変更が必要
ICカード 認証が安定していて安価。社員証と兼用できる カードの紛失、室内への置き忘れ
顔認証 手がふさがっていても通れる。カードが不要 髪型や眼鏡の大きな変化。管理用のPCが必要
スマートフォン カードの発行が不要 スマートフォンの電池切れ・機種変更
役員室やサーバー室など、入室できる人を限定したい部屋に
役員室やサーバー室など、入室できる人を限定したい部屋に
執務エリアの入口にカード認証を設けると、来客動線と分けやすい
執務エリアの入口にカード認証を設けると、来客動線と分けやすい

管理の方式

方式 特徴
スタンドアロン型 管理用PCが不要で、費用を抑えられる。履歴は残らない
PC管理型 多数の扉を一括で管理でき、入退室の履歴が残る

導入前のチェック項目

  • 対象の扉の数と、それぞれの扉の種類(開き戸・引き戸、材質、厚さ)
  • 履歴が必要か、入室だけか退室も管理するか
  • 解錠の方法(テンキー・カード・顔など)
  • 出入りする人数
  • 既存の扉に後から取り付けるか、新しい扉か
  • カードを使う場合、必要な枚数と既存の社員証の利用可否
ここがポイント

壁の中に配線する電気錠は、間仕切りや壁を組み立てるタイミングで配線するのが理想です。壁が仕上がってから配線すると、配線が壁の表面に露出してしまいます。

フィルム付きガラス間仕切と框ドア
フィルム付きガラス間仕切と框ドア

セキュリティのゾーニングを決める

入退室管理を導入する前に、オフィスを「誰が入れるか」でいくつかのゾーンに分けて考えます。ゾーンが決まると、どの扉にどの程度の錠が必要か、誰にどの権限を与えるかが自然に決まります。

ゾーン 例 管理の考え方
パブリック 受付・エントランス 来客も自由に出入り。施錠は営業時間外のみ
セミパブリック 会議室・応接室 来客は社員の同伴で入室
執務エリア オフィススペース 社員のみ。カードや顔認証で解錠
高セキュリティ サーバー室・役員室・金庫室 限られた人のみ。履歴を必ず残す
ここがポイント

ゾーンは内側に行くほどセキュリティが高くなる「入れ子」の構造にすると、管理が分かりやすくなります。高セキュリティの部屋に、執務エリアを通らずに入れる動線がないかも確認しましょう。

権限の設計と運用ルール

入退室管理は、導入時の設定よりも、その後の運用で効果が決まります。特に人の出入り(入社・異動・退職)に合わせた権限の変更が滞ると、退職者のカードで入れる状態が残るなど、セキュリティの穴になります。

  1. 部署や役職ごとに、入れる扉のパターン(権限グループ)を決める
  2. 入社・異動・退職の手続きに、カード発行・権限変更・無効化を組み込む
  3. カード紛失時の連絡先と、即時に無効化する手順を決める
  4. 清掃業者や設備業者など、社外の人の入室方法を決める
  5. 権限の棚卸しを定期的に行い、不要な権限を削除する

人事の手続きと入退室管理の担当が別部署の場合は、連絡が漏れやすくなります。退職手続きのチェックリストに「入退室カードの無効化」を必ず入れておきましょう。

非常時の動作を決めておく

入退室管理で最も重要なのは、火災や地震のときに人が確実に外へ逃げられることです。電気錠の停電時の設定に加えて、次のような点も確認します。

  • 火災報知設備と連動して、避難経路上の扉が自動で解錠されるか
  • 室内側からは、カードなしで必ず開けられる構造か
  • 停電が長引いた場合に、管理者が手動で解錠できる手段があるか
  • 非常時の解錠後、どのように元の状態に戻すか
ここがポイント

避難経路上の扉の錠は、建物の防火・避難の基準に関わることがあります。建物や自治体によって扱いが異なるため、ビル管理会社や専門業者、必要に応じて所轄の消防署に確認しましょう。

扉と錠の相性を確認する

同じ認証方式でも、扉の種類によって取り付けられる錠の種類が変わります。既存の扉に後付けする場合は特に注意が必要です。

扉の種類 注意点
ガラス扉 錠を取り付ける枠や金具の選択肢が限られる。配線の通し方も工夫が必要
引き戸 開き戸用の錠は使えない。引き戸対応の錠を選ぶ
防火扉 加工に制約がある場合があるため、ビル側と事前に確認
自動ドア 自動ドアの制御装置と連動させる必要がある

扉のメーカーや仕様によっては、錠の取り付けで扉自体の交換が必要になることもあります。現地調査で扉の状態を確認してから、方式を選ぶのが確実です。

入退室の履歴を活用する

履歴を残せる方式を選んだ場合は、セキュリティ以外にも活用の幅があります。

  • 不正な入室や、共連れ(1人の認証で複数人が入る)の確認
  • 部屋ごとの利用状況の把握と、レイアウト見直しの判断材料
  • 災害時に、オフィスに誰が残っているかの確認

ただし、履歴は個人の行動記録でもあります。何の目的で、誰が、どのくらいの期間閲覧できるかを社内規程で定め、従業員にも周知しておくことが大切です。

導入の流れと工期の考え方

入退室管理の導入は、機器を選ぶだけでなく、内装工事や社内手続きと並行して進める必要があります。一般的な流れは次のとおりです。

  1. ゾーニングと対象の扉を決める
  2. 現地調査で扉の種類・配線経路・電源の位置を確認する
  3. 方式と機器を選び、見積と工事範囲を確定する
  4. ビル側の承認を得る(テナントビルの場合)
  5. 内装工事と合わせて配線・取り付けを行う
  6. カードの発行と権限登録、社員への説明を行う

移転や改装と同時に導入する場合は、壁を立てる前に配線計画を確定しておくことが重要です。後から追加すると、配線が露出したり、工事費が増えたりする原因になります。

よくある失敗と対策

失敗例 対策
退職者のカードで入室できる状態だった 退職手続きにカード無効化を組み込む
扉を開けたまま固定する運用が常態化 開放アラームや、扉が閉まったか確認できる機能を検討
来客が社員と一緒に執務エリアへ入ってしまう 受付から先の動線を分け、同伴ルールを周知
ここがポイント

機器の性能より、運用ルールが守られているかがセキュリティの水準を決めます。導入後も定期的に運用状況を見直しましょう。

よくある質問

Q. 電池錠の電池が切れたらどうなりますか。

多くの製品は電池残量が少なくなると警告を出します。完全に切れた場合の非常用の解錠方法(非常用キーや外部給電など)を、導入時に確認しておきましょう。

Q. 社員証のICカードをそのまま使えますか。

カードの規格が対応していれば利用できる場合があります。既存のカードの種類を確認し、対応する読み取り機を選ぶ必要があります。

Q. テナントビルで入退室管理を後付けできますか。

可能な場合が多いですが、扉の加工や配線工事にはビル側の承認が必要です。電池錠のように工事が小さい方式から検討するのも一つの方法です。

この記事の数値や内容は一般的な目安です。建物の条件や働き方、法令・ビルの規定によって最適な答えは変わります。

オフィスづくりのことなら、家具・内装・設備までまとめてご相談いただけます。

空間づくりを相談する法人見積を依頼する
ブログに戻る